東京国際映画祭 特別招待上映レポート

10月23日~31日まで東京で開催された、第27回東京国際映画祭。 『アップルシード アルファ』も特別招待作品として上映されたが、10月28日にはその上映にあわせて、 荒牧伸志監督やメインテーマを担当した中田ヤスタカ(CAPSULE)らによる舞台挨拶が開催された。 原作者・士郎正宗の代表作のひとつとして、今でも熱狂的なファンの多い『アップルシード』の、映画化作品ということもあり、 当日の会場となった劇場内は満席状態。 上映直後の会場では、大きな拍手に迎えられて、荒牧監督と中田氏、そして日本版のメインキャスト陣が登壇した。 さらにデュナンの衣装を着たモデルのゆらさんとブリアレオスのコンビも仲良く登場、観客からの熱い視線を浴びていた。

 映画化作品としては3作目となる『アップルシード アルファ』のこだわりについて聞かれると、荒牧監督は「ルック(CGの見た目・質感)を変えることも含めて、すべて一度リブートして、また新しい『アップルシード』の物語を始めるところが出発点でした。今回は『アップルシード』のなかでも一番大切な要素であるデュナンとブリアレオス、2人にフォーカスを当てたストーリーにしよう、というのが最初の発想。そのために、原作の一番最初のエピソードである戦争が終わった後、廃墟のなかで暮らす2人にフォーカスしたいな、と――制作当時の自分の心情を含めて、考えました」
また、セルルックだった前2作からフォトリアルな方向へ舵を切った理由について、荒牧監督は「廃墟の手触り感であったり、彼ら2人が廃墟で暮らしているという質感をできるだけリアルに描くことが彼らの心情を伝えることになるんじゃないか、と。実を言えば、かなり反対を受けたのですが、そんな私の考えもあって、強引にこのルックを採用させていただきました。こうした形で完成したことに対して、今日、登壇していただいたキャストを含め、スタッフのみなさんに改めて感謝しています」。
また劇場版『アップルシード』シリーズは、先鋭的なサウンドも大きな魅力のひとつ。原作について聞かれた中田は「こういうメカがいっぱい出てくる映画が大好物なんです。実際、完成した作品を観ると、モノの重さが観ているこちらに伝わってくるほどリアル。軽々と動いているように見えるんだけど、すごいパワーが感じられました。この映像にはいったいどんな音楽が合うんだろう?と考えたのですが、バッチリの曲がすぐに思い浮かびました。」とコメント。
また、そんな中田の発言を受けて「音楽と映像の関わり方」について聞かれた荒牧監督は、「音楽は映画のなかでもすごく重要な部分です」と話した。「映画の印象の5割は、音楽によって変わってしまうと、そんな気がしています。また今回の『アップルシードアルファ』では、既存の曲を当てはめるのではなく、今回の映画にあわせて10人以上のアーティストの方に新たに曲を書き下ろしていただきました。しかもほぼ映像ができあがってから、音楽の作業に入ったので、僕自身もしっかりと注力できて、とても楽しく作業できましたね。当初はヴォーカル曲が多いこともあって、使いどころに悩んだこともあったのですが、こちらが期待していた以上のものに仕上がったと思います」
また当日上映されたのは字幕版だったが、この日は2015年1月17日から公開になる日本版のキャスト陣も出演。この日本版のデュナン役を演じた小松由佳は、「単なる“英語版の吹き替え”ではなく、あくまで“日本版”を作ろうという意気込みで、アフレコに挑みましたので、字幕版とはまたちょっと違う印象になっているかと思います。とにかくクール、カッコいいと思ったのが率直な感想ですが、これまでのシリーズ作品と比べて、シンプルでわかりやすい、しかもデュナンとブリアレオスのラブストーリーであると同時に、平和へのストレートな想いも伺える。そんな作品になっていると思います」。
そんなデュナンとコンビを組む、ブリアレオスを演じた諏訪部順一によれば「日本版のために、新たにセリフを再構成した部分もある」とのこと。「純粋に、映像と台本から受けとったイメージでお芝居をしています。なので、吹替版とは言わないでください!(笑)。映像を見て個人的に感じたのは、金属の素材感や重量感、そして空の広がりがとてもリアルだということ。今日、みなさんがご覧になったのは英語版ですが、本作は日本人監督が手掛けた作品です。随所に“日本の香り”が感じられたのではないでしょうか」。
また悠木 碧が演じたアイリスは、本作の物語のカギを握ることになる存在。「長尺の吹き替えに挑戦するのはこれが初めてだったので、収録当日はとても緊張していたのですが『悠木さんが感じたアイリスを、そのまま演じてください』と声をかけていただいて、とても安心しました。3DCGの映像はとてもリアルだし、例えばブリアレオスのようなサイボーグもたくさん出てくる作品なんですが……。なんというか、仕草がとても人っぽいんです。外見はいかにもメカっぽいんだけど、ハートは人間なんだな、と。そう思わせてくれる場面がいっぱい散りばめてあって、とても好きな作品になりました」。
そして日本版キャスト陣の最後を締めくくったのは、アイリスの護衛を務める半サイボーグの青年・オルソンを演じた高橋広樹。アフレコ収録中の出来事として「タロスというキャラクターがいるんですが、彼は口パクがない役で。演じた東地宏樹さんが「俺、口パクがなくて楽だったな」とおっしゃっていたのが印象でした」と、エピソードを披露。同じく、口パクのないブリアレオス役の諏訪部に話を振ると「たしかに楽でした(笑)。でもブリアレオスは、見た目より感情が豊かなんです。英語版よりもリアクションなど細かなニュアンスは多めに入れています」と、その舞台裏を明かした。また舞台挨拶に先立って楽屋で、現在公式サイトで公開中の日本版トレーラーを見たという高橋は「ものすごくいいものになっている」と断言。「今日、劇場にいらっしゃった方は、もうすでにストーリーをご存知だと思いますが、ぜひもう一度、日本版で僕たちの作った『アップルシード』の世界を楽しんでみてください」。
 スタッフ・キャスト陣、ともに力の入った一作となった『アップルシード アルファ』。劇場公開の日が楽しみになる、そんな舞台挨拶となった。