荒牧伸志・小松由佳・諏訪部順一 スペシャルインタビュー

「アップルシード アルファ」日本版のアフレコにあわせて、荒牧伸志監督、デュナン役の小松由佳、ブリアレオス役の諏訪部順一にスペシャルインタビューを実施しました!

――『アップルシード アルファ』は、2004年の『APPLESEED』、2007年の『EX MACHINA』に続く、3本目の劇場版作品になります。荒牧監督から今回のストーリーについて、簡単にお聞かせください。

荒牧 私は3本続けて監督をさせていただいているのですが、この3本はそれぞれ独立した作品になっています。特に今回の『アップルシード アルファ』は、原作のなかでも第1巻の冒頭、最初の30ページほどの部分がモチーフで、デュナンとブリアレオスがオリュンポスを訪れる前――大戦が終わって、廃墟と化した世界を彷徨っている頃をクローズアップしたお話になっています。戦争が終わってあてもなく日々を暮している2人は、いわば失意の状態にあるのですが、今回の映画で起きる出来事をきっかけにして、さまざまな意味で「希望」を見出していく。そういう話になっているかな、と思います。


――今作のコンセプトについてお聞かせください。前2作品との違いはどこにあるのでしょうか?

荒牧 まずわかりやすいところで言えば、ルック(見た目)が大きく異なります。2004年の『APPLESEED』は、トゥーンシェーディングを使った作品ということで注目をいただきました。続く『EX MACHINA』はそれをさらに進化させた形で制作しましたが、今回の『アップルシード アルファ』ではいわゆるフォトリアルなルックを採用して、CGアニメーションというものがどこまでできるのか、そこを突き詰めることをテーマに制作しています。なぜこうした手法を採用したのか。その理由は、じつは先ほどお話ししたストーリーとも、非常に絡んでいる部分なのですが、このストーリーだからこそフォトリアルなルックを選んだ。そういうつもりで作っています。あと、もうひとつポイントを挙げるとすれば、ストーリーをシンプルにする。原作者の士郎正宗さんの作品というと、非常に複雑な背景を持った作品が多いのですが、今回の『アップルシード アルファ』は、舞台が戦争が終わったばかりの世界――言い換えれば、テクノロジーがすべて一旦、リセットされたような状況が舞台になっています。そういう意味ではストーリーも非常にシンプルですし、原作ファンの方であればより一層楽しめるような深みを持たせつつ、ファンではない方にも入り込みやすいストーリーになっているんではないでしょうか。


――小松さんと諏訪部さんはアフレコ現場で、すでに映像をご覧になられたわけですが、どのようにお感じになられましたか?

小松 私は普段、外国映画の吹き替えのお仕事が多いので、アニメーションとなると緊張する質なのですが(笑)、今回の『アップルシード アルファ』はフォトリアルな映像ということもあって、海外映画の吹き替えに挑むような形でやらせていただきました。ひとつ印象に残ったポイントを挙げるとするなら、メカの質感がすごかったですね。双角というキャラクターが登場するのですが、その鼻や口のあたりの動きがすごく好きで、何度も繰り返し観てしまう(笑)。双角のファンになってしまいました(笑)。

諏訪部 英語版が先行して世に出ている作品ではあるんですが、我々が出演した日本版も「吹替ではなく、これはこれでオリジナルだ!」という心積もりで自分は収録に臨みました。精緻な映像に、日本人の感性で声をあてるならこうだろう!という感じで(笑)。映像を観ていて特に印象的だったのは、金属の質感や重量感、そして空間の広がりですね。大きな空やたなびく雲、陽の光など、非常に美しく。とても目に心地良い作品だと思いました。


――おふたりの演技を見てみて、監督の印象は?

荒牧 今回はすごく大勢のキャストの方にオーディションを受けていただいたんですが、そのなかでもちょっと新しいデュナンとブリアレオスのイメージが欲しくて、小松さんと諏訪部さんを選ばせていただいたんです。諏訪部さんが先ほどおっしゃったように、すでに英語版が先にある状態ではあるんですけども、日本版を制作する際に、もう一度「日本のキャラクター」として、デュナンやブリアレオスたちを構築し直したい、という気持ちが強かったんです。ですから日本版の台本は、僕自身が監修したのはもちろん、士郎さんにも監修していただき、またそのタイミングで新しいアイデアを入れてもらったりもしています。それこそ諏訪部さんが演じられたブリアレオスは、ありがたいことに口パクがないキャラクターなので……(笑)。

諏訪部 誰にとって一番ありがたいかというと、自分なんですけどね(笑)。

荒牧 あはは(笑)。彼は口パクがないので、どんどんセリフを詰め込んでやれ! と。基本的にブリアレオスは無口なキャラクターなんですが、そこに彼らしいニュアンスを足していくという作業を、今回は相当、やっています。その結果、英語版と――まったく違うとはまで言えないですが、かなりニュアンスが異なった日本版ができたんじゃないかな、と。もちろんデュナンもそうですね。今回、小松さんに演じていただいたことで、すごく自然体な、新しいデュナン像を吹き込んでいただけたな、と。じつはアフレコの収録自体(時間が)押してしまったんですが、もっとずっと見ていたかったな、と。そう思えるほど、楽しい収録でした。


――監督から演技の指導などあったと思いますが、なにかエピソードを伺えますか?

小松 監督の今のひと言で、ようやく緊張がほぐれました(笑)。私自身、『アップルシード』という作品にすごく思い入れがあって、プレッシャーも感じていたんですが、諏訪部さんがおっしゃっていたように、私も「日本のデュナン」を演じようと思っていました。ですので、私が台本を読んだときに感じたデュナン、そして映像を観たときに「原作とここが違うんだ」と感じたデュナンを、そのまま素直に出せたらな、と。それがどう出たかは、みなさんに判断していただきたいと思いますが、私にとっては本当に幸福な時間でした。

諏訪部 『アップルシード』は過去に何度も映像化されていますし、また錚々たる先輩方がブリアレオスを演じられているわけですが、あえて自分のなかでそのイメージは一旦忘れて、自分なりのブリアレオスが構築できれば、と思い取り組みました。なにせ彼は口パクがありませんし、表情が変わるわけでもない。話し方ひとつで感情に変化をつけられるキャラクターですので。結果、本当に楽しく収録は行えました。台本の残りページが減っていくのが寂しくて(笑)。



――お互いの演技の印象についてもお聞かせください。

小松 もちろん諏訪部さんのお名前は存じ上げていたのですが、ご一緒させていただくのは、今日が初めてで。なので、どういう感じになるのか予想がつかなかったのですが……。私が思っていたよりも、ずっとカッコいいブリアレオスでした(笑)。ひたすら、絶対に守ってくれるというか……。諏訪部さんって普段から、女性とあまりケンカをなさらないですよね?

諏訪部 そうですね(笑)。

小松 やっぱり(笑)。こう、ケンカになりそうになっても、スッと引いてくれる感じ。ああ、こういう人だったら長続きするかも、と思いながら演じてました。

諏訪部 いやいや(笑)。でも小松さんが演じたデュナンも本当に素敵で。自分が台本や映像からイメージしていた感じをそのまま体現したようなキャラクターでした。おかげで、スッとパートナー役に気持ちを入れることが出来ました。


――おふたりがそれぞれデュナン、ブリアレオスに対して、共感できるなと感じたところは?

小松 私自身は平和主義者というか、気は強いんですけど、争い事が本当に嫌いなんです。特に国と国の争い事は、絶対に避けるべきだと思っているんですけども、デュナンもまた、そういう考えの女性なんだな、と感じました。ただ彼女は、仕事として、生きるために戦うし、ブリと一緒にいるために戦う。目の前の目標を達成するために戦っているところがあって、基本的に戦いが好きではないんですね。そこが男の人にとっての戦争と、女の人にとっての戦争の大きな違いだと思うんです。そういう「戦い」に対するデュナンの考え方は、すごく共感できたところですね。

諏訪部 ブリアレオスは、やるときはやるんだけど、ちょっとしたところでポカする、みたいな雰囲気ありますよね。ちょっと生きるのに不器用な感じ。そういうところが似てるかもしれませんね(笑)。



――『アップルシード アルファ』は、海外で公開された後に、日本での公開という形になりました。海外公開を視野に置いて制作が進められたと思うのですが、作劇や絵作りに影響はあったのでしょうか?

荒牧 もともと海外での展開に比重を置いて、制作はスタートしています。そのひとつが、シナリオの進め方ですね。脚本は英語で書かれているのですが、もともとのプロットは国内の僕らで作っています。それを海外のシナリオライターに預けて、上がってきたものをまたこちらで直して……という手順を踏んでいますね。あともうひとつ、国内での公開だけを目指したならば、ここまでフォトリアルなルックにはできなかったかもしれない、というのはあります。正直、「フォトリアルで行きたい」と言ったのは、僕のゴリ押しだったんですが、そこを企画として通していただけたのは、当初から海外を市場として想定していたから、というのは大きいでしょうね。ただそれ以外の部分では、それほど大きな差があるとは思いませんし、海外に向けてストーリーを変える、というようなことはまったく考えていません。


――では最後に、作品の「ここを見てほしい」というポイントをそれぞれお願いします。

小松 まずは映像のスケール感や質感ですね。わたしがこの大きさだと、アレはあれくらいになるんだ、とか、あるいは重さはこうなんだ、とか。例えばデュナンのランドメイトを動かすのは、あんなに大変なんだな、とか(笑)。そういう部分を観ていただけるといいな、と思います。あと『アップルシード』は毎回、豪華なミュージシャンの方が参加されているんですが、今回もとても豪華ですね。私自身もノリノリで収録に挑めました。ぜひ観ていただいた方と「どこが好きだった?」と話し合いたい。そんな作品になっています。

諏訪部 以下同文です(笑)。……というのは冗談ですが、本当に映像、音楽、ともに素晴らしい作品ですので、英語版はもちろん、我々が心を込めて演じた日本版も、ぜひご覧下さい!

荒牧 これまで話したことと重複する部分も多いのですが、やはり映像としては手触り感や空気感、あるいはモノのあり方に対して、キッチリと向き合った作品にしたい。ただフォトリアルというだけではなく、主人公たちの心情が一挙手一投足から伝わるような質感、触ってみたらこうだろうなというところまで含めて、観客の方に伝わるような映像にしたいと考えながら、制作を進めてきました。今回は優秀なスタッフのおかけで、その部分に関しては、かなり達成できたんじゃないかと自負しております。  また、日本版に関して言えば、ただの日本語吹き替えではなく、日本発のオリジナル作品として、キャラクターや世界観を一から観直して制作したい、というのが当初からの目的でした。それが今日、小松さんと諏訪部さんにデュナンとブリアレオスの声を演じていただいたことで、ちゃんと命を吹き込んでいただけた。最初に声をあてていただいた瞬間に「これは行ける!」と感じたほどだったのですが、おふたりに声をあてていただいたことで、俺のデュナンとブリアレオスがようやくできたという手応えがありました。なのでぜひ、みなさんにも「日本のデュナンとブリアレオス」を観ていただきたいな、と思っています。